世界大戦によって失われた時間は、この傑作スポーツカーの登場によって一気に取り戻されます。
必要に迫られた最小の大衆車か、戦前の技術を引きずった旧式な高級車に二分されていたヨーロッパについに光が差したのです。
光はもちろん甘い生活に人生をささげる人々の国、イタリアに降り注ぎます。
ピニンファリーナによってもたらされたジュリエッタスパイダーは完全美を持つ奇跡の車であります。
ルネッサンスの天才が大理石から掘り出したようなその姿は、どこから眺めても一抹の不安を感じることはありません。
どのような風景の中にあろうともその存在感は侵しがたく、走り去る姿の美しさはイタリアンスポーツカーだけが持つ特権であります。
この小さなアルファロメオの登場を待ち望んだかのように、あまた巨匠はスクリーンの中にその力を借りて傑作をものしました。
ジャッカルが356では喜劇です、マストロヤンニがジャガーでは悲劇です。
さてこのジュリエッタスパイダーです。
初期ジュリエッタのハイパワーモデル、ヴェローチェであります。
最先端の技術を惜しむことなくつぎ込まれ、この後登場する自動車史上における最高傑作ジュリアシリーズの礎となる車です。
ショートホイールベース、やや小さく見え三角窓を持たないフロントガラス、小ぶりなテールレンズ等が初期モデルに見て取れます。
オリジナルはやはり微妙なバランスに優れ、ひときわ美しいたたずまいがあります。
エンジン番号とシャーシー番号のマッチング、オリジナルのウェーバーDCO3は連続番号となります。
65年以上前のクラシックとは言えアルファロメオは走りが身上です。
発電機は直流発電機を模したオルターネーター等、必要最小のモデファイは施しました。
気難しいDCO3はオーバーホール済み。
精巧なドラムブレーキも不安なく効きます。
ハンドリングと直進性には欠かせないクラシックミシュランに交換済みです。
幌と内装は時代に合わせて交換してあります。
最高の畑の最良のヴィンテージ、ワインと違い生涯楽しめる資産でありましょう。
理解し、慈しむオーナーをお待ちします。